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勢いよくカーテンを開ける。毎朝の日課だ。窓から差し込んだ光がまだ眠っている彼女の目覚めを促す。
「今日は良い天気だな」
「……うん……」
布の中で動く音と、僅かな唸り声。それが耳に入ると早く彼女にこの景色を見せたくて仕方がないので、今日もおれが起こしてやる。
「ナツ、起きろ。今日も良い空だ」
「……ほんとう?」
目は開いていないが顔だけをこちらに向け問いかけてくる。本当だと告げると、枕元で充電しているカメラを手探りで見つけ、見えないままでも慣れた手つきで起動する。そして窓の外を見ようとして、そこで本日初めて彼女の目が開いた。
「晴れ!」
青空に弾けるように表情を明るくし、嬉しそうに窓を開ける。今日はナツの大好きな、雲を所々に散りばめた晴れ空だ。カメラを構える横顔が一層輝いて見える。
ナツは空が好きだ。どんなに淀んだ曇りの日でも、空を見るどころではない雨の日でも、毎朝楽しそうに空を眺めては手元に保存する。中でも一際良い反応を見せてくれるのが今朝のような空だ。雲一つない青空よりも、雲がある青空の方が好きらしい。
「やっぱり雲があるとお得感があっていいね」
雲すらないと空の色しか楽しめないが、こんな日は様々な雲の形と綺麗な空を同時に見ることができて得なのだと言う。言われてみれば納得できる気がする。
「じゃあ朝めし作ってくるな」
一日が始まる。空がそこにある限り彼女の笑顔が見られるから、毎日幸せだ。
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